このルート案は正気≠ナすか?
北陸新幹線「舞鶴ルート」はありえません!!
・舞鶴経由は、受益よりも損失のほうが遙かにが大きい
・舞鶴への別途高速鉄道案
【2016年9月29日0時25分初版発行】
[舞鶴経由は、受益よりも損失のほうが遙かにが大きい]
北陸新幹線敦賀以南ルート案から京都を通さないものが消えて一安心、と思ったら、2015年末に与党整備新幹線検討委員会のメンバーが交代するやいなや、妙な新ルート案が出て来ました。それは、小浜・舞鶴・京都を通るルート(以下「舞鶴ルート」)です。以下の図に赤線で描かれた線ですが、実に珍奇な案です。その異常性を説明するのには、地図だけで十分です。詳細は不要でしょう。
左図には、赤の「舞鶴ルート」及び、青の「小浜・京都ルート」案を示しています。 滋賀県が先頃「米原ルート」(ここでは示していません。「米原ルート」にも利点はあると思いますが、乗客に乗り換えを強いるだけでなく、JR東海と西日本の受益配分を複雑にする米原ルートは、いくら建設費が安くても、案としては失格だと私は考えています)の優位性を示すため、各ルートの収支採算性などを独自の視点で公表しましたが、同県が前提としたルート案には、京都駅へのアプローチ線形等、幾つもの難があるので、それには倣わない私案です。「小浜・京都ルート」では、新幹線が通らないかもしれないのに、いわゆる並行在来線問題を深刻に捉えざるを得ない滋賀県の立場に配慮し、大津市北部に駅を設置する案にしました。 敦賀〜京都間の建設距離は、「舞鶴ルート」で約165km、「小浜・京都ルート」で約100kmとなりました。ちなみに、「小浜・京都ルート」の距離は、「米原ルート」を経た敦賀〜京都間と、ほとんど変わりません。 |
「舞鶴ルート」の異常さを敢えて説明するなら、以下が挙げられます。
1)建設距離が長くなるので、建設費が高額になる。 |
2)建設距離を長くしただけの受益が生じない。 |
3)利用の中心となる北陸〜関西間の旅客に対し、長い移動時間と高い料金を強要するので、損失が大きい。 |
(1):65km長くなれば、建設費は恐らく3000〜4000億円は増えるでしょう。(2):建設距離を延ばした先に、人口50万人以上の都市でもあれば意義はあるでしょうが、「舞鶴ルート」の沿線人口は希薄です。さらに、西側から京都市街にどうやってアプローチするつもりでしょう?名勝・嵯峨野を分断したり、市街中心部を延々と地下線で通るルートなど、京都市民が認めるわけがありません。大きく北に迂回する必要が生じますが(上記の私案では、その前提で線を引いています)、京都市街をぐるりとほぼ一周させるだけでも各所で環境問題を引き起こし、その影響は「小浜ルート」の比ではありません。(3)は、以下の表をご覧下さい。建設しようとしているのは「北陸新幹線」のはずですが、北陸〜関西間利用客の財布に、大きなダメージをもたらします。
小浜・京都 |
舞鶴 |
差額 |
||
富山〜新大阪 |
営業キロ | 323km |
388km |
|
普通車指定席特急料金 |
4740円 |
4740円 |
||
運賃 |
5620円 |
6480円 |
||
合計 |
10360円 |
11220円 |
860円 |
|
金沢〜新大阪 |
営業キロ | 265km |
330km |
|
普通車指定席特急料金 |
3990円 |
4740円 |
||
運賃 |
4750円 |
5620円 |
||
合計 |
8740円 |
10360円 |
1620円 |
|
福井〜新大阪 |
営業キロ | 189km |
250km |
|
普通車指定席特急料金 |
3110円 |
3990円 |
||
運賃 |
3350円 |
4430円 |
||
合計 |
6460円 |
8420円 |
1960円 |
また、65km延びることで損失する時間は、約20分程度と考えられます。「舞鶴ルート」による受益者に比べ、損害を被る人の数は、比べものにならないほど多いのです。
当初は、ルート選考委員長が地元に対するリップサービスとして「舞鶴ルート」を持ち出してきただけであり、当の委員長も本当に実現するとは思っていないだろう、とたかをくくっていましたが、最近になって、「舞鶴ルート」を山陰新幹線の一部にしようという動きがあり、雲行きが怪しくなってきました。まさに「我田引鉄」の典型です。
繰り返しますが、これは「北陸」新幹線計画であり、現在の特急『サンダーバード』の代替になるものです。他の機能を付加し、肝心の関西対北陸の利便性を著しく落とすことは、決して容認できません。
[舞鶴への別途高速鉄道案]
京都府北部が、高速鉄道に恵まれていない事情は理解します。ただ、そこからさらに西の現山陰線沿線を含め、フル規格新幹線を通すにふさわしい産業・ 人口集積があるとは言えません。そこで、「小浜・京都ルート」を小浜付近から分岐させ、小浜線の約30kmを改良することで舞鶴に直通列車を走らせることを提案します。現在の山陰線・舞鶴線経由よりも、格段に時間短縮となるでしょう。予算に応じ、線形の悪い部分だけ別線を単線で整備するなど、柔軟に対応することで、一層の時間短縮を望めます。
北陸新幹線を山陰新幹線に取り込もうとする「舞鶴ルート」は容認できません。ただ、観光地を控えた京都府北部と、我が国の核エネルギー政策に長年貢献してきた小浜線沿線の声を無碍にすることもできません。双方が納得する妥協点は、上述した案以外にないと考えます。関係者の英断を切に希望します。