交通と地球温暖化に関する基礎知識

・地球温暖化を進める「温室効果ガス」のほとんどは、人間の生活や経済活動に伴って排出される二酸化炭素(CO)です。
・2007年の日本からの二酸化炭素排出量は、13億400万トンにものぼります。
・クルマから排出される二酸化窒素(NO)と二酸化炭素を混同している人がいました。ご注意を。
・温暖化対策を、政府任せ、企業任せにしていませんか?「あなた」にも大きな責任があります。

日本の二酸化炭素総排出量・一人あたり排出量の推移
日本の部門別二酸化炭素排出量(’90年/2007年)
旅客輸送機関別1人1kmあたり二酸化炭素排出量
旅客輸送機関別エネルギー消費割合
家庭からの二酸化酸素排出割合
参考:電気を消費する鉄道利用は控えるべきでは?・・・いいえ、そんなことはありません。
参考:国の歳出に占める公共事業費の割合・公共事業費に占める新幹線建設費の割合

日本の二酸化炭素総排出量・一人あたり排出量の推移

出典:温室効果ガスインベントリオフィス

・増加傾向に歯止めがかかっていない。


日本の部門別二酸化炭素排出量推移(1990年/2007年)

出典:温室効果ガスインベントリオフィス

・産業部門は経営効率を上げるために、努力して削減を続けてきた。
・運輸、家庭などの増大が著しい。
・これ以上産業部門のみに大幅な削減を強いるのは無理がある。
・全体量削減のためには、運輸部門、家庭部門で大幅な削減が必要である。

旅客輸送機関別1人1kmあたり二酸化炭素排出量(2006年)

出典:国土交通省など

・鉄道は、航空や自動車に比べて遙かに排出量が低い。
・輸送を排出量の低い鉄道に遷移させる必要があるのは明白である。

旅客輸送機関別エネルギー消費割合

出典:国土交通省など

・旅客輸送の為のエネルギー消費が、極端に自動車に集中している。
・未だに自動車のほとんどがガソリン車であり、化石燃料以外のエネルギー寄与率が低いため、自動車の二酸化炭素排出量割合は、エネルギー消費割合よりもさらに大きくなる。
・この圧倒的な消費量を、短い時間のうちに大幅に減少させるほど低排出車を急速に普及させるのは、不可能である。
・すなわち、低排出車が普及するのを待っている時間は無い。低排出車の普及が温暖化対策になるというのは幻想に過ぎない。やらないよりましだが。
・自動車の輸送量(人キロ)が、仮に10%増えたとしたら、その分鉄道が減ったとしても、国全体の二酸化炭素排出総量を1.1%増大させることになる。あれ、1990年比で25%減らすんじゃなかったっけ?

家庭からの二酸化酸素排出割合

出典:温室効果ガスインベントリオフィス

5.35トン/世帯

・自動車がいかに大きな比率を占めるかを認識する必要がある。
・クルマの利用を減らせば、家庭からの排出は大きく減らせる。
・クルマの利用を減らさない温暖化対策など、あり得ない。
・クルマは急いでHV/EVなどに買い換えて!それでも公共交通機関の排出効率には及ばないけど。

電気を消費する鉄道利用は控えるべきでは?・・・いいえ、そんなことはありません。

※ページの上の方もご一読下さい。

【理由1】暑い日の電気の使い方を見ますと、ピークは最も気温の高い午後2〜3時頃となります。仮に鉄道が、国全体の消費を左右するほど大量の電力を使うなら、ピークは朝夕ラッシュ時に来るはずであり、決してこのようなパターンになり得ません。

【理由2】東北地方太平洋沖地震に伴う福島原発事故の影響で、今後日本ではどうしても原発稼働率を下げざるを得ません。そうなれば、短中期的に火力発電への依存度が高まり、それは温室効果ガス排出量増加となって現れます。「日本は地震があるから温室効果ガス排出抑制は無理です」なんて言い訳は国際世論では通用しませんから、どうしても発電部門以外で、より積極的に温室効果ガス排出への努力をしなければいけません。他の交通機関よりも排出効率が圧倒的に低い鉄道への依存度は、上がることがあっても下がるということはあり得ませんし、あってはならないのです。

「鉄道→電気喰う→悪」という図式は、木を見て森を見ない、実に浅はかで表面的な「思いつき」でしかありません。(5/22/2011)

鉄道事業者が、夏の日中運転本数を抑制する動きは受け入れないといけません。節電には誰もが協力すべきであり、歓迎します。ですが、それは交通モードとしての電化鉄道が、他の交通機関より劣っていることを意味するわけではなく、全く別次元の事象です。(6/12/2011追記)


国の歳出に占める公共事業費の割合・公共事業費に占める新幹線建設費の割合

※ページの上の方もご一読下さい。

出典:国交省・財務省

・一般会計歳出に対する公共事業費の割合は、減少傾向にある。

出典:国交省

・公共事業費全体に占める新幹線事業費は、問題にならないほど小さい。
・公共事業費全体が縮小するなか新幹線事業費割合が増大しているのは〝選択と集中〟の成果である。
・新幹線の新規着工をしても、20年間以上にも渡る整備期間で年あたりの事業費は今とほとんど変わらない。新聞記事の扇情的見出しに騙されてはならない
・公共事業費の多くは道路建設費である。かなり減ったものの2011年は国費だけで3兆982億円。新規着工予定の新幹線総事業費全額をたった1年で使い果たしてしまってなお足りない額である。
・本来マスコミが批判すべきは、環境負荷の高い自動車交通を増大させる道路整備他にこれだけの税金が投じられている実態であり、新幹線事業批判は甚だしい筋違いである。

・「新幹線整備の財源が無い」のではない。問題の根源は、政治が硬直化した財政支出構造を改めないため、必要な事業に予算が振り分けられないことにある。

 

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