「保守」という言葉の意味

斜面ってのは、元々耕作には適さない。

そこを拓き、僅かな土地で米を作る。

稲作には、水を引かねばならない。沢の水を引くのだが、適切な水温の管理が難しい。そもそも、田に引いた水を漏らさずに石垣を組むのが至難の業だろう。

斜面を埋め尽くした棚田を見るとき、この地を拓き、守ってきた地域の先祖達に、深い崇敬の念を抱くのを禁じ得ない。

太古には、このような技は困難だっただろう。日本は、稲作の故郷に比べ寒冷であるはずだから、稲作技術の深度化が必要だったし、斜面を拓くには、土木施工技術の高度化や社会の集団化も待つ必要があった。生活を「保」ち「守」るということは、狷介固陋であり続けることでは断じてない。

不具合を少しずつ修正し、時代に合った新しいものに変え続けることことが保守である。鉄道の保守部門の仕事を思い出していただければ、その言葉の意味が分かるだろう。昨今の自称・保守派は、そこを根本的にカン違いをしている。先祖に敬意を表したいのなら、時代に適合するよう自らを変えつづけてきた、先哲の姿勢にこそ学ぶべきだ。何でも懐古趣味に浸るのが保守だと思っているのは、単なる暗愚である。

※撮影地:俵坂峠付近。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です