時間返せ!/ここはどこでしょう(86)。

英語で90分の講義した。

で、聴講生のほとんどは日本人。何でそんなバカなことやるかって?知らねえよ。

でも、想像はつく。文科省に対し、「当学は〝国際化〟に熱心です」ってアピールするためだけなんだよ。で、補助金がふえるかもしれないから、こんな無意味な ことをやらされる。結構時間かけて講義の準備したオレの懐には一銭も入らない。通常の研究教育業務を一時休止するので、アウトプットも減る。一銭も入らないど ころか、明らかにソンしかしていない。

思えば10年くらい前から、「研究一生懸命やってるアピール」「教育一生懸命やっているアピール」「学部活動一生懸命やってるアピール」「コンプライアンス を遵守しているアピール」の為の業務量ばかりが、うなぎのぼりに増えている。で、その〝やってるフリ〟をするために、本来重視されるべき研究・教育活動の時間 がどんどん削られる。やってられない。

もちろん、そんな状況でも〝頑張る〟人は居るだろうよ、家庭を犠牲にして、睡眠時間を犠牲にして、市民として政治参加する時間を犠牲にして…。

オレ達の実態は、奴隷だよ。こんなバカバカしいことは、もうウンザリだ。多分、民間でも同じような傾向はあるところもあるだろうが、マシなリーダーを戴け ば、バカバカしさに気付き、改善するだろう。でも、無事に定年を迎えることしか考えていない組織に、そんなことは期待できない。組織のアタマからして、文科省 の奴隷だからだ。

もう日本からは、ノーベル賞なんか出ないよ。こんな事ばかりに人的リソースを注ぎ込むバカな国は、ノーベル賞なんて贅沢なものは当然ダメ。そればかりか、あ らゆる事象において、凋落の一途を辿るだけだ。中国は当然として、これからアジア諸国にも次々追い抜かされるだろう。対策は一つ。知的活動を担う人の育成にカ ネを注ぐしかない。だが、高額機器を購入するカネは出しても、若い人を雇う事ができないシステムになってしまっているんだな。学位取得者の年収が200万円台 なんて事例はざらにある。悲惨だよ。

この国の政治家は、一体何がしたいんだ?自分達の置かれている状況すら正しく認識できないような連中を、なんで税金で養わなきゃならないんだよ?国民こぞっ て集団自殺が望みなのか?

若い人には、こんな国を捨てて海外に出ることをお勧めする。天賦人権論すら否定するような連中で、内閣のほぼ全員が固められているような、どうしようもなく 遅れた国には、もう滅亡しか道は残されていないように思える。

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前回は、東所沢駅の南西方。先日クルマが落っこちたところ。

今日の出題。

恩人たち

「朋百舎密書(ぽんぺせいみしょ)」が化学遺産(日本化学会選)に認定。これ、残っていたのか!!!松江赤十字病院は偉い!!。

オランダ人軍医ポンペが、幕末期に長崎の西洋医学所で講義した記録である。後に化学に進んだ人が記したので、主にそちらの記述が多い。舎密=化学(Chemistryの発音から由来)である。

ポンペは言うまでもなく、近代日本医学の大恩人である。幕末~明治初期の医学に携わった人達には、ポンペから長崎で直接講義を受けたお弟子さんたちも多い。

なぜ医学でなく「化学」なのか?そこが西洋医学の思想そのものであり、ポンペはその精神も伝えようとしたのだ。医学とは、数学・物理学・化学など、全ての学問を元に構成されている総合科学である。従ってポンペのカリキュラムには、これらの基礎科学の講義も入っていたのだ。「医者は医術のみ」だった当時の日本人にとっては、衝撃的だっただろう。

ポンペがすごかったのは、それらの基礎科学も、全て自ら講義したことである。

問題は、それら全ての講義を理解するに足るほどの蘭語の語彙力を持っている当時の日本人学生など、居ないに等しかっただろう。恐らくただ一人の例外・佐渡の伊之助(司馬凌海)を除いては。

伊之助のお陰で、多くの日本人学生がポンペの講義を理解でき、近代医学用語もできあがった。伊之助も近代日本の恩人である。しかし、学生たちの多くがその後、明治政府の元で大役を果たすことになった一方、伊之助は一人寂しく死んだ。

伊之助はアスペルガー症候群(AS)であったと伝えられる。恐らく間違いないだろう。彼の小説を記した司馬遼太郎も凄い。司馬遼太郎は恐らく、ASなんて概念は全く知らなかったはずだが、ものの見事にそれを描写しきっている。