値上げ/佐賀の行方。

国交省より、北陸新幹線(金沢・敦賀間)工事実施計画の変更認可についてという歩道発表。インフラ部の設計変更ではなく、事業費の増額である。

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新幹線西九州ルートで未着工の新鳥栖〜武雄温泉の整備方針を初夏までに決めるべく、関係各所が動いている。JR九州はもとより、与党検討委も全線フル規格を支持する方針だが、それでは今までと変わらない。佐賀県が首を縦に振る材料を提示できるかどうかが問題だ。

思いがけぬ不安。

新鳥栖〜武雄温泉のフル規格新幹線着工に目処が立たず、当面は在来線特急との乗換駅となる武雄温泉駅。まさに新潟駅の5番線/〝乗換ホーム〟と同じように、在来線特急の新幹線側にホームを設け、対面乗換を可能にするよう、既に図面も公表されている(→長崎県による暫定開業合意文書添付資料)。

ところが一昨日、JR九州社長が会見で妙なことを口走った。いや、メディアが社長の意図を汲み取らずに意味不明な記事を書いたのかもしれない。曰く、

「高架と高架(の高さ)をうまく合わせることができないかと協議している」(佐賀新聞・長崎新聞)

ええっ?そんなの大前提じゃ無かったの?今さら高架橋の高さが合わないからどうしよう と思ってるとか、あり得る話なのだろうか?たしかに、元々はフル規格が前提で、対面乗換は〝降って湧いた話〟なので、高さが合わない設計にしていても不思議ではないのだけど。

対面乗換の利便性をアピールするため、単に社長が徐々に手の内を明かす芸を披露しているだけなのかもしれないが、不安をそそる。

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JR九州と言えば、グループ中期経営計画2019-2021が公開された。

長い目で見ろ。

JR北海道が、北海道新幹線開業3年間のあゆみという報道発表。

新幹線の輸送実績が、開業ブームが去るにるれて落ち込んでいる状況が示されている。メディアはこの部分だけに食いついたし、JR北海道にしても窮状を訴えたい気持ちはあるだろう。

メディアとしては、余計な事を言っていないで、新幹線を札幌まで早期に延伸させる予算をつけない政治を糾弾した方が良いぞ。実際その通りなのだから。

トンネル掘削(だけ)は進むよ。

鉄道・運輸機構から羊蹄トンネル比羅夫工区掘削工事安全祈願祭のお知らせがあった。長万部〜倶知安間の9790m。全体を2つの工区に分け、今回は札幌方が着工の運びとなった。

何十回書いたか分からないが、地上区間の工事はまだである。

まばたき区間。

大村市街を抜けた新幹線西九州ルートは、木場トンネルに入り、多良岳の南側裾野に回り込む。

多良岳西側と同じく、古い成層火山の裾野を谷が刻み、浸食から残された尾根が連なる。ルートはそこを串刺ししていくが、谷は高架橋・尾根はトンネルで抜ける。トンネルと明かり区間が短い間隔で繰り返す区間となる。

木場トンネルの長崎方坑口。

次の第一岩松トンネル(手前)との間。

第1岩松トンネルと第2岩松トンネルの間。

規格外急曲線。

大村線諏訪駅の北側。


新幹線は、大村線とほぼ並走する。大村線のカーブに合わせて曲がる。規格外のR=700が入ってしまう。

諏訪駅舎。

高架橋が駅舎にぶつかりそうだが、ギリギリでぶつからない。なぜならここで、大村線から東に離れていくため、再度R=700が入るのだ。

新大村を発車した長崎行き新幹線は、連続急カーブのために、すぐにスピードを上げられないことになる。

交通至便。

新大村(仮称)駅付近。

橋脚が横に4列並ぶ。この駅は相対式2面2線だから、ホーム部と高架橋部を一体として施工しているらしい。

駅は主要道の脇。西九州道大村インターへすぐ。空港も近い。希に見る「交通至便」な場所になるのだ。

その主要道は、既設の大村線の下をくぐる。大村線にも新駅が設置される予定だが、スペースがないので、恐らく1面1線の駅になるだろう。

参照:

大村市の新幹線ページ

駅周辺まちづくり計画(2014年8月)。

新大村駅から大村線の諏訪駅方面を見る。

分岐部。

▽の大村総合車両基地の下(南)の頂点付近。左が西九州ルートの本線。土木部完成済。あとは防音壁を埋める。右が大村車両基地への引き込み線でまだ整備中。単線が上り本線から分岐する形。

竹松駅の北。分岐部分で、高架橋の幅は3線分。これから桁を設置するところらしいが、おそらく基地への引き込み線のうち、高架橋と手前の土工部分を繋ぐものだろう。


もう少し竹松駅寄り。

「総合」?

大村車両基地北端。

ここ数年来、土盛りをし、沈降に合わせて整地を続けていたと思う。

大村線側・および北端には擁壁が設けられている。新幹線の本線は、東側を走り、この場所からは見えない。新幹線と大村線は、ここから南に向かってだんだん接近するが、その間の三角地帯に基地が建設されることになる。ちょうど、新函館北斗駅近傍の函館総合車両基地が、函館本線と新幹線本線との間に設けられているイメージに重なる。

基地の南端近くから。大村線と本線は、かなり近接している。

基地予定地内には、まだ建造物などはない。

さて、この大村車両基地だが、仮にGCTが西九州ルートに正式採用されていたならば、新大村の軌間変換装置より佐世保線・長崎本線を介して、新鳥栖の軌間変換装置から鹿児島ルートに合流するルートで、車両を熊本総合車両基地へ回送できたはずなので、全般検査能を有する「総合車両基地」である必要はなかったはずだ。

ところが、GCT不採用が正式に決定したため、西九州ルートで使用される車両はフル規格車両となり、他線へ乗り入れない〝天涯孤独〟の運用を強いられる。

かつて、鹿児島ルートが新八代以南のみの暫定開業をした際、川内の車両基地は、「総合車両基地」ではなかった。全般検査に要求される、台車を含む重要部品のオーバーホールは、小倉工場へ陸送していたという。

同じ手を使うのなら、大村基地は総合車両基地ではなくなるのだが、一体どうなるのだろう?

参考になるのは、鉄道・運輸機構が基地建物諸設計を発注した際の公示書。一昨年度のものだ。

うーむ、そこにはたしかに「全検」の文字が躍っている。

となると、「大村総合車両基地」ということになる。

車両キロがさほど大きいわけではないのに、総合車両基地をエリア内に2箇所も設けなければいけなくなるとは。JR九州は泣いていると思う。