新幹線駅は空港よりも中心街に近いから便利
超高速鉄道のメリットは、他交通機関に対する圧倒的な環境優位性に加えて、既存市街地にある在来線駅に併設することが多いため、結果的に都心からのアクセスが便利になることである。諸事情で併設できなかった場合でも、新大阪駅は梅田から約4km、新横浜は横浜駅から約5kmに位置し、JR在来線に加え地下鉄も連絡しているため、利便性は悪くない。そのことが、さらに鉄道の競争力を高めていることを指摘しなければいけない。航空会社の宣伝コピーは、しばしば空港アクセス時間やそれにかかる費用を無視してフライト時間しか示さず、それをもって『新幹線より速くて安い』と言いたげだが、それは大半の人にとっては全く意味をなさない数字である。
遙かなる「新函館駅」
しかし、2005年度新規着工がほぼ決定した、北海道新幹線の暫定的な北のターミナルとなる『新函館駅』は、いくらなんでも中心街から遠すぎる。現函館駅から約18kmも離れており、函館空港までの距離約6kmと比較すれば、「史上初めて空港より遠くて不便な新幹線駅」と陰口をたたかれるのもうなずける。新駅が計画されている渡島大野からは、快速列車でも、五稜郭駅まで約15分、函館駅まで約20分はかかるものとおもわれる。新幹線による時短効果がかなり減殺されるうえ、乗り換えによる負担も相まって、鉄道の競争力が確保できない。これではせっかくの投資が無駄になる。
北海道新幹線はあくまで札幌をめざすものだ。世界最大の航空輸送量を持つ羽田ー千歳間の乗客の約半分を転移させるだけでも大幅な温室効果ガス排出抑制効果を持つので、必ず建設しなければならない。鉄道による所要時間短縮が大命題であるため、新函館付近のルート自体を変更し、函館市街地に近づけるわけにはいかない。現行計画でも、新函館駅付近に規格外のカーブを入れ、最大限南に持ってきているのだ。
図中の新幹線ルート(赤線)は正確ではない (3/8/05改訂)
現駅に乗り入れできないか?
そこで、渡島大野に三角線を作り(上図)、在来線に標準軌を併設し、新幹線の一部を現函館駅まで乗り入れさせることを提案したい。現行計画ルート上の新函館駅には、将来札幌ー首都圏を直通する速達列車と、札幌ー函館直通列車を停車させ、相互に連絡をはかることとする。
言うまでもないが、新幹線函館現駅乗り入れには、現行計画の整備費よりも若干上乗せする必要が生じる。しかし、これは観光都市・函館の浮沈がかかった問題である。新幹線が開通しても、空港より遠い駅では、どうやって今以上の集客を図ると言うのか。
函館をこよなく愛する、一観光客からの提案である。特に市民の側からの要望の声が高まることを期待する。新函館駅計画を破棄するわけではないので、大野や七飯の住民に気兼ねすることもない。