「北陸新幹線乗り換え案」は容認できない

国交省の不可解な「腹案」

  2005年度から、北陸新幹線福井駅の建設が着手される。地元では「えちぜん鉄道を2階に、新幹線を3階に」という二重高架を提案しているが、国交省は「えちぜん鉄道も新幹線も2階に並べ、(まもなく供用開始される)在来線高架と同じ高さに」という単純構造を提案している。ここではその可否については論じないし、福井駅の件自体、ここで議論の対象にするつもりはない。

 しかし、国交省側の提案理由の一つを聞いて心底驚いた。『在来線と新幹線を同じ高さで並べておけば、九州新幹線・新八代駅のように対面乗り換えが可能となる』と言うものだ。乗り換えが大前提なら、新八代駅の構造は確かに理想に近い。しかし私が驚いたのは、国交省が「将来北陸新幹線が北から延伸されたときに、福井駅での乗り換えを想定している」ということなのだ。

乗り換え前提は受け入れられない

 もしそうなら、極めて由々しき事態である。現在、大阪・京都〜金沢・富山間の輸送は、鉄道が圧倒的に優位に立っているが、金沢から京都・大阪に行くのに、一体誰が福井駅で乗り換えることを想像するだろうか。新八代で乗り換える人数とは比べものにならないほど多くの直通旅客が現在でもいるのだから、乗り換えを前提になどしてもらっては困る。北陸新幹線は東京側から建設が進められているが、現在の輸送量は大阪側の方が多いはずであり、列車本数の差にもそれが反映されている。大阪側の旅客がとばっちりを受けないようにしなければいけない。

 並行在来線が経営分離されれば、直通特急を走らせてはいけない、という規定があるわけではない。東京側からの旅客が新幹線を使っても、大阪側からの旅客は在来線を使い続ける、というのも一つの方法だ。しかし、これでは経営主体のJRが納得しない。実用に耐える軌間可変列車(GCT・「フリーゲージトレイン」とも言われる)が完成すれば、それを使用できるだろうが、標準軌専用新幹線車両よりも機構が複雑で重く、かつ超高速走行性能に未知数の部分があるGCT導入を前提にして良いものだろうか?

脱線対策を兼ねた「4線軌新幹線」の提案

 そこで、建設中の新幹線に、狭軌レールも併せて4線軌とし、在来線特急も乗り入れ可能にできるようにするわけにはいかないだろうか。標準軌(1435ミリ)の2本のレールの内側に、狭軌(1067ミリ)のレールをさらに2本、中心線を共通にして敷設すると、60kgレールの底面幅は145ミリであるので、左右それぞれの標準軌と狭軌レールの間には、39ミリの隙間がそれぞれできる。新しい締結装置を開発しなければならないが、実にタイムリーなことに、新潟県中越地震による上越新幹線脱線から得た教訓から、レールの内側或いは外側に、脱線防止用レールを敷設したらどうか、という提案がなされている。内側に狭軌レールがあれば、一石二鳥ではないか。

 681/683系電車の最高速度は160km/hにとどまっているため、最高速度260km/h(或いはそれ以上)の新幹線車両と混在させると、ダイヤ構成上甚だしい不都合が生じる。幸か不幸か、上記の北陸在来線車両は、交流25000V対応ではないのでそのまま使えず、北陸新幹線開業は10年以上先のため、狭軌を超高速走行できる車両を開発する時間は十分にある。せっかくのインフラは、冗長性の高いシステムにしておきたい。


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