北陸新幹線の福井以南ーフル規格での建設は無理だと心得た方が良い

鉄道が十分な競争力を持つ、関西圏ー富山間

 特急「サンダーバード」は速い。列車の表定速度は100km/hを越え、在来線で1,2を争うスピードランナーである。大阪-富山間を3時間と少々で走破する。鉄道が優位性を十分保てる時間距離であり、空路の設定もない。ライバルは高速バスでなければマイカーだ。大阪ー金沢間などは、他交通機関を圧倒しているだろう。北陸対関西圏との時間短縮効果に関しては、北陸新幹線を大阪までフル規格で引っ張ってくることに、あまり意義はないのである。

京都を通らないナンセンスな「若狭ルート」

 現在、敦賀以南のルートは決まっていないが、小浜市付近・亀岡市付近を経由する「若狭ルート」が以前から取り沙汰されている。大阪から山間部を通り、一気に福井県まで抜けることで京阪間の住宅密集地を避け、建設費の削減を見込んだつもりかもしれないが、このルートには大きな問題がある。それは現京都駅を通らないことを前提にしていることである。これは、東海道新幹線が名古屋を通らないのと同じくらい、ナンセンスな発想である。人口140万人の大都市に利便性を図らず、一体何のための大量交通機関なのか。

大都市圏での新線建設は、気の遠くなるような資金と工期が必要

 そこで、米原で東海道新幹線に接続する案や、GCT(いわゆるフリーゲージトレイン)で、湖西線を経由する案も出ている。しかし前者については、「列車密度が高いので、もし中央新幹線ができなければ、東海道新幹線と北陸新幹線の共用は不可能」というのがJR東海の見解だ。それなら新線建設を、となるが、(新)大阪-京都間に新規のフル規格路線を建設することが極めて困難であることは、誰の目にも明白にだろう。用地買収対象件数は数千を下らず、この区間・約40キロの建設費だけで、1兆円に迫る建設費が必要になるかもしれない。今の財政状況や、公共事業への資金投入に関しては、相変わらず鉄道だけには滅法風当たりの強い世論の動向を考えると、新線建設は不可能、という結論が導かれる。

湖西線経由のGCTが王道である

 したがって、大阪から富山までの直通輸送サービスを堅持したまま、取りあえず北から金沢(〜白山車両基地)まで建設中の新線区間における速達効果を享受するためには、大阪から、現在の京都・湖西線経由のGCTを運行することが現実的である。

 問題は、北から延びてくる新線と、どこで乗り入れるか、ということだ。現在、北陸新幹線はフル規格で、長野ー金沢ー白山車両基地までと、飛び地のように福井駅周辺0.8kmが建設中である。東京ー福井間を北陸新幹線で移動するとなると、割高な新幹線乗車距離が長くなり、運賃面でのメリットが享受できないため、鉄道利用者は従前通り米原経由を選択するのではないか、と私は思っている。そのため、フル規格の北陸新幹線は、とりあえず長野ー白山車両基地までで十分ではないか、との感が拭いきれない。GCTは白山車両基地の南側の本線上で、狭軌から標準軌へと乗り換えるのが良い。その代わり、形式上すでに着工はしているが、まだ埋蔵文化財の調査中の為、本体工事には着手していない福井駅部と、認可申請段階となっている白山車両基地ー福井間の建設は、少なくとも金沢開業まで中断すべきだ。福井以南のフル規格化計画は、完全にうち捨ててもやむを得ない。南越・敦賀のいずれも、フル規格新幹線の結節点としては甚だ不自然であり、北陸トンネルをもう一本掘削するというのも、気の遠くなる話だ。

 長距離に渡って細切れに建設が進んでいるため、建設されたトンネルや高架橋が結局十数年もうち捨てられる、という北陸新幹線の整備のされ方には、いい加減ウンザリさせられる。建設資金を分散させず、一部でも開業を早めるべきだ。


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