国交相とJRの出番です。
−「新潟問題」の合理的解決のために−
北陸新幹線建設費増額分負担問題に関して、新潟県が国に対し「県内に全列車停車を」と主張するのは甚だ筋違いだと指摘した。泉田新潟県知事がこの要求を出すとすれば、その相手はあくまでも、運営主体となるJRである。
もちろんJRは、この要求を決して受け入れてはならない。もちろん受け入れるつもりは無いだろう。整備新幹線の計画はまだ終わりではない。こんな地元のエゴをいちいち受け入れていたら、沿線はこぞって同様の無理難題を押しつけてくるだろう。これでは「新幹線」というハードウェア全体のパフォーマンス低下を招き、超高速鉄道の意味をなさなくなる。また近い将来、湿った雪が多く降るという路線条件を持つ北陸新幹線で、積雪・降雪時における列車の超高速度試験も行わなくてはいけなくなるだろうが、同路線は急勾配や(新幹線としては)急曲線が比較的多く介在する。線形が良く明かり区間が比較的長く続く頸城平野は試験に好都合だが、上越新駅に必ず列車を止めなくてはいけない、などというバードウェアの制限をつけてしまっては、その重要な試験が未来永劫不可能になる。このようなことは、あってはならない。
しかし一方で、地域との協調あっての鉄道会社でもある。受け入れられない要望を撥ね付けているだけでは、地元と良好な関係を保てなくなり、ひいては経営にも悪影響を及ぼす。特にJR東は、信濃川水利権問題において、新潟県に対して借りがあることを忘れてはならない。
新潟県は、「上越駅全列車停車要求」のような、意味のない無理難題を引っ込めて、JR東西に対して以下のことを要望して協議するのがよい。JRは、それに対して真摯に対応すべきだろう。
1)信越線・新井〜高田〜直江津〜新潟の直通列車を、現状のまま維持すること
2)金沢〜新潟の直通特急を、編成両数を減らしたとしても、本数は現状のまま維持すること
3)北越急行線普通列車の、越後湯沢・直江津への乗り入れを現状通り維持するだけでなく、さらに直江津始発着列車を高田・上越新駅(脇野田)経由で新井まで乗り入れることに協力すること
4)列車の相互乗り入れだけでなく、新政権による申し合わせに従い、財政的にも並行在来線を圧迫しないよう、あらゆる補助的な措置をおこなうこと
5)上越新幹線定期列車の本数を、北陸新幹線開業後も減らさないこと
6) 上越新駅の近くに、地元の協力を得ながら経営できる、新しい発想に基づいた集客施設を設けること
原則として、経営分離後の並行在来線経営主体に帰する問題も含まれているが、それでもJRは協力を惜しむべきではない。これだけの譲歩を引き出せれば、泉田知事も他の要求を、全て引っ込めるに値すると判断できるだろうし、そうして貰わなくては困る。
(6)として私は、『鉄道克雪博物館』(仮称)というものを考えた。雪と闘う鉄道の設備を、在来線・新幹線両方について紹介する施設である。新幹線本線の消雪設備の実物を、営業列車の間近で見学できると理想的である。場所は、新駅北側の保守施設あたりが良いだろう。これだと、夏場の集客に問題が生じるが、アイデアは何でも良い。地元からJRに提言できるように、知恵を絞る甲斐のあるものにできるよう、話がすすめられれば結構だ。
今回の問題が長引いた背景の1つには、新潟県が要求の持って行き場所を誤ったということがある。鉄道建設機構・国交省・JR・沿線他県と、それぞれ「受け持ち」が異なるが、間違った場所に間違った要求が行ってしまえば、それだけ多くの人が余計な時間を取られ、無駄な労力を強いられることになる。その調整をするとすれば、やはり最終的には国交相ということになるのではないだろうか。問題を徒に長引かせないように、大臣自らリーダーシップを取るべきだろう。